アメリカ大陸横断、そしてシアトル。

アメリカ大陸横断、そしてシアトル。

前回は2020年12月にポートランドのAmazonで働きはじめたナオミスカイブルーさん。あれから半年経ってアメリカではCOVID-19の影響もワクチン接種が進み、ずいぶんと状況が変わってきているという情報もあり、久しぶりに現在の状況をうかがいました。

ポートランドから引っ越しました

Amazonで働きはじめて、最初のうちは仕事の楽しさもあり、また働く人もすごく多くて賑やかでした。でもその生活の中でポートランドの街や人に、以前と明らかに違う違和感を強く感じるようになっていきました。

COVID-19の影響で、多くの国や都市がそうであるように、観光で賑わっていた当時は様々な国から訪れていた人達も街からいなくなり、ローカルの人達だけが残ったという雰囲気がどこに行っても感じられました。そして何よりも以前にはなかったリスクや危険を感じることが増えました。

例えばポートランドの街中でBLM(Black Lives Matter)運動が盛んに見られたんです。数十台に及ぶ車での人種差別への抗議と、警察への残虐行為への抗議運動がありました。私が住んでいた家は比較的主要な通りに面していたので、その抗議の車が通りすぎるのを何度か見ました。

それに街中はあらゆる商店や銀行などのガラス戸に分厚い板が張られて異様な雰囲気でした、出歩く人も少なくて。そして気が付いたのが街に警察官の姿がないんです。

ルームメイトの一人は警察への抗議活動をしていました。自分たちの身の安全のために、何かあった際は、警察ではなく弁護士に電話をしようと、ルームメイトたちの間でミーティングもしました。
(街に警察がいないのは、警察は治安維持対応に忙しかったり、同時に事件が発生しているため手が回らないという情報もあります。)

人通りがなく閑散としたポートランド市内。至る所に板が張られている。治安はかなり悪化していた。

それにAmazonで爆発的に売れていたのがスプレーペッパー(防犯・護身用)なんですよ。コロナ前はとても穏やかな雰囲気だった通りも、一人歩きには注意が必要です。特に車を所持していない者にとっては、街を歩けるその場所と時間は限られていると思います。

コロナでサイドウォークですれ違う際は距離をとって歩いたりしていましたが、一度、夜勤明けの早朝に、犬を散歩中の若い男性に「なんで道避けないといけないんだよ。」とぶつぶつ言われたこともありました。

車を持っていないのでバスで通勤していましたが、その中でまで危険を感じることがありました。ある日たまたま乗り合わせていた6人くらいの若者達にしつこく絡まれて、よく見ると目が違うんですよね。はっきりドラッグやってるとわかるんです。

ポートランドの街中にパンデミックで溜まったストレスや鬱憤が噴出している感じでした。外から来ていた人達がいなくなって街が様変わりしているし、何より危険を感じることが本当に増えてきて、4月中旬に一旦ニューヨークに引っ越しました。ほとんど避難に近かったですね。

住み慣れたニューヨークとシアトル

本当はポートランドからすぐにシアトルに移りたいと思ってましたが、シアトルはすごく物価が高くて、すぐに住み始めることが難しく、ニューヨークの状況も調べました。ニューヨークでは中心部から郊外に人が移り住んだりして人口が減っていて、空き家が増えて家賃も随分下がっているんです。

以前住んでいて土地勘もあるし、ポートランドのようなローカルな雰囲気もなく、住みやすいことも分かっていたんです。私が借りたシェアハウスはブルックリンで一月800ドル。そこに住みながらシアトルのコミカレの授業をオンラインで受けていました。そして6月になってシアトルに戻ったんです。

シアトルは記録的な猛暑

ポートランドからニューヨーク、そしてシアトルに引っ越したナオミスカイブルーさん。久しぶりに話した彼女の第一声は「今のシアトル暑くて地獄です!」とのこと。あれ?シアトルってそんなに暑かったかなと思ってどんな状況か聞いてみると、猛暑が続いていて19:00現在で気温は36度。明日の日中は42度とかになりそうです。

え、シアトルが42度!
私も以前シアトル近郊に住んだことがあり、真夏でも比較的涼しい記憶しかありません。一般的な住宅にはエアコンもついてなかった記憶さえあるのですが。どういう事なんでしょうか。

ナオミスカイブルーさんとお話していたちょうどその頃、アメリカのニュースで話題になり始めた西海岸の猛暑。ポートランドでも46度を記録したということで何とこれは観測史上最高とのこと、その原因はヒートドーム現象というものらしいのです。簡単に言うと高気圧が広範囲に鍋の蓋のように上空を覆うため、熱い空気が地表に閉じ込められてしまうのだそうです。

ナオミスカイブルーさんはこの記録的な猛暑のまさにまっただ中に居るわけです。心配になって住居の状態を聞いてみると。今は10人以上で一軒家に住んでるんですけど、家主がDIYで部屋を区切っていて、一部屋の面積は3~4畳といったところで、当然エアコンはないので室内は蒸し風呂状態です。外に出ると危険なほど暑いです。夜は9時過ぎても明るく気温も下がらないですし。エアコンがないと室内でも本当に熱中症になりそうで、一時的にホテルに避難しようと思いましたが、どこも満室で身動きが取れません。

何だか、話を聞いているとリアルな暑さが伝わって、可哀想になりますが、大阪とシアトルではどうすることもできません。ニュースを見ていると、この現象は数日間続くということです。

シアトルってどんな街?

シアトルといえば世界的なIT企業のMicrosoftやAmazon、それにNintendoも本拠を構えており、スターバックス発祥の地としても有名な西海岸有数の都市です。

私が一番印象に残ってるのはイチロウのいたシアトルマリナーズ。もう20年近く前に友人からのプレゼントで貰ったマリナーズのイチローTシャツを今でも持ってます。

シアトルはスターバックス発祥の地。第一号店が観光スポットになっている。

IT系企業には多くの日本人も働き、任天堂のゲーム人気などもあり、日本文化もよく知られています。またアジア人の人口の割合も多いため、比較的住みやすいというイメージがあります。
ナオミスカイブルーさんもやはり、そのあたりの事がポートランドからシアトルに引っ越そうと思った要因の一つということでした。

それから名門ワシントン大学の街としても有名ですし、西海岸のカルチャースポットとして最も有名なキャピトル・ヒルもありますね。ここに今はIT系企業で働く若年富裕層も多く住み、様々な文化や価値観を共有して呼吸している街とも言えるので、刺激も多い。

ニューヨークもそうですが、こういう多様性に富んだ街をナオミスカイブルーさんは居心地よく感じているみたいですね。

Amazonを辞めたけどお仕事は?

ポートランドではAmazonで働いて、当時はその仕事もかなり気に入ってたそうです。現在シアトルに引っ越してきて、仕事はどうなっているんでしょう。

シアトルは教育制度が充実していて、以前コミカレのプレカレッジ(大学入学前)のクラスに通っていたので、その続きで語学力をもっと強化したいと思って、授業を受けています。ニューヨークに居たときもずっとオンラインで受講できていました。

巨大なワシントン大学でも対面授業が始まり、通学する人が戻ってきているので今年の秋くらいには私の通うコミカレも通学が始まるという話があります。

現在は同じカレッジで移民が受けることの出来る、政府補助のあるESLクラスにいますが、そのあとはカレッジに進むこともできます。

春のクォーターは、インストラクターが作成したアメリカの歴史や法律、先住民、またワシントン州の土地や政治などを全て盛り込んだ素晴らしい内容で、移民の人全員にお勧めしたいプログラム内容でした。

またジョブトレーニングというコースもあり修了まで最低でも1年くらいかかるのですが、IT系や会計、介護、看護、その他医療系、幼児教育などのコースも選択できるので、そちらへの進路も考えてます。

引っ越してきてまだ一ヶ月くらいなんですが、昨日仕事の面接にも行きました。季節限定のパートタイムですが、シアトルマリナーズの球場、Tモバイルパーク内の商業施設でキャッシャーの仕事をはじめます。

この仕事の時給はいくらですか?と聞くと18.5ドルということですから、日本円だと約2,000円。時給が高い!と思われるかもしれませんが、シアトルは家賃もスーパーも、レストランも物価高なのです。
アメリカで暮らす人達は口を揃えて言いますが、日本の物価が安すぎるんですね。

ということで、今回は約半年ぶりにナオミスカイブルーさんの近況をお届けしました。早く涼しさが戻ってきて過ごしやすくなるといいですね。仕事も決まったと言うことで、今度こそ安住となることをお祈りしています。